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(やくしゅおんあらためさしあげもうすいっさつひかえちょう)

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 「くすりの町のあゆみ」コーナーで最初のケースに展示している
 薬種御改指上申一礼控帳を取り上げてみましょう。

この文書は江戸時代の初期(四代将軍 徳川家綱の時代)の文書です。
 明暦4年7月4日付で、道修町薬種屋33人が連判して、御公儀(奉行所)へ差し出した内容を町年寄り・町中宛てにも作成した文書です。

内容は、偽せ物の多い35種類の薬種の取扱について、自主的な取締りを申し
合わせたものです。

ショーケース内で開かれているページには、

『差し上げ申す一礼の事
諸薬種の内、似(に)せ これ有るに付き、
今度御吟味
(ぎんみ)
仰せ付けられ候間、書き上げ申す。』 
(種々の薬の原料の中で、似せ物があるので注意するよう言われた件に関して書面を提出します)        

という文章に続いて、

「覚」
(おぼえ)としてSASIAGE.JPG - 10,714BYTES

『一、牛黄(ごおう)  これは唐より参り候内にも、似せ御座候。
又日本よりも似せ出で申し候…』と
牛黄の正真と似せとの見分けについて述べられています。
そして牛黄のほか、
和辰砂(わしんしゃ)、熟地黄(じゃくちおう)、雷丸(らいがん)など
35種類の薬種の取り扱い方を箇条書きにし、
多くは薬性が悪いとか、偽者が多くあるとか、薬種の起源・薬性がわからない
ことから売買の禁止、また修治をして商売することや、名前を申し変えて
本名で販売することなどが書かれています。
そして

「似せ薬は申すに及ばず、紛らわしい薬種はいっさい商売しない」
ことを誓って連判しています。

そして、「もし書付けに相違つかまつり、その外にも似せ薬など商売
つかまつり候者御座候はば、見つけ、聞きつけ次第、きっと御公儀様へお断り申し上ぐべく候。
隠し置き、脇より知れ候はば、御公儀へ仰せ上げられ、如何様にも仰せ付けらるべく候。
その時、御町中少しも御恨みに存じまじく候。その上、薬屋中切々寄合い、薬の吟味平に油なく
つかまつり、借屋中までに申し付くべく候」
(連伴状に反し、嘘をついて商売で扱った業者があれば、見つけ聞きつけ次第、仲間で取り調べて
奉行所へ報告致します。もし、隠していて仲間の外より知れたならば、奉行所から如何様(いかよう)
に仰せ付けられても結構です。
その時は、町中を少しも恨みません。さらに薬屋仲間が寄り合い、薬の吟味を一層油断なく行い、
借家中(注)にも申し付けます。)
という文章になっています。

注:借家中とは、家持でない仲間のこと

 

連判した33人の名は次の通りです

ふしみや 宗 意 永 来   彌左右衛門
  同    吉兵衛 鳥飼屋  甚兵衛
  同    清三郎 川崎屋  三右衛門
  同    庄右衛門 ゑびや  次郎右衛門
吹田屋  六左衛門 鳥飼屋  惣兵衛
小西   六右衛門 (以上11人)

 

 

 

 

 

以上11名は家持(一人前の町人と認められた)で、
以下の22名は借家人で「薬屋五人組」のグループ(借家中)
になって、各組ごとに共同責任を負うようになっていました。

 

ふくしまや 七右衛門 ふしみや 作兵衛
こにし    源右衛門  同    九郎兵衛
くすりや   七兵衛 五貫屋   清兵衛
こにし    與八郎 ふくしまや 又兵衛
ふしみや   四良兵衛
上しま   七左衛門
川崎屋    久三郎

  (以上5人)  

こにし  四郎佐衛門    くすりや  徳右衛門

くすりや 七郎兵衛     こにし    作右衛門

しほや  喜兵衛       同     興左衛門

池田屋  庄兵衛      すいた屋  久右衛門

のむらや 四郎兵衛     ふしみや  藤兵衛

(以上6名)                          (以上5人)         ゑ  び   治兵衛
                                      
                                                   (以上6人)


 当時でいうところの、“似せ薬”は、現在では薬事法という法律で規制されており、違反すると厳しく罰せられます。
明治7年(1874)に贋薬販薬取締方(がんやくはんやくとりしまりがた)が制定される200年以上も前に、既に
似せ薬に関して自主的な取り決めがあったわけです。
信用を重んじる道修町薬業者の品質管理に対する厳しい姿勢をうかがい知ることができる古文書です。

 享保7年(1722)に幕府から信用できる薬種を取扱うことを公認された124人の株仲間が成立しますが、
この文書からは、その64年前に、自主的に品質管理機能をもった薬種屋仲間が存在していたことが分かります。

更にこの文書からは、次のことが分かります
@この時代は基原(生薬の基となる動植鉱物)、薬種・薬効等の点から長崎貿易で輸入される唐薬種が
 重視される傾向にあった(産地主義)
A唐薬種は一般に非常に高値である為、それに代わる国産の薬種がぼつぼつ産出され取引されていた
B和薬種は大方は唐薬種の混ぜ物(偽薬)として扱われていて単独での売買は禁止されていた
Cある薬種には副作用や刺激・毒性等の軽減、または薬効の増強などを目的にした「修治」方が決められて
 行われていた

SASIAGE-2.JPG - 16,866BYTES以上が明暦4年(1658)の古文書の内容ですが、享保7年(1722)に道修町薬種屋に株仲間124人が公認されます。
 ここで少し疑問に思われる点は明暦4年から64年の間に道修町薬種屋が91人も増えていることです。
道修町文書保存会の調査員であった渡辺(旧姓大野)祥子氏の研究によれば、「明暦4年の文書は年寄り川崎屋治左衛門および御町中に宛てて作成されたものであること、および川崎屋治左衛門が道修町一丁目の住人であることから、御町中とは道修町一丁目のことであり、一丁目の薬種仲間が作成した史料であると考えられる」とのこと。
(17世紀中期の大坂・道修町:「年報都市史研究5」商人と町、1997年10月)従って、明暦4年の33人は、道修町全体ではなく、一丁目に限った薬種仲間の人数であるとすれば、納得のいく話になるわけです。

                                 
                            ご参考までに、自主的な取締りを申し合わせた35品目の本質・基原・薬能を表にしました
番号

薬種名

基原

薬能

1

牛黄(ゴオウ) ウシ又はスイギュウの胆嚢・胆管結石 鎮痛、鎮痙、利胆、解熱、ひきつけ

2

熊ノ胃(クマノイ) ツキノワグマやヒグマの胆汁の入った胆嚢乾燥品

同上

3

虎膽(コタン) 虎の胆嚢の乾燥品

同上

4

白丁香(ハクチョウコウ) スズメのタチフンに酒を加え乾燥した物 腹水、浮腫、黄疸、筋けいれん、
目の混濁

5

麝香(ジャコウ) ジャコウジカの腺分泌物 強心、呼吸促進、降圧、抗炎症

6

阿仙薬(アセンヤク) アセンヤクの心材を煎じ濃縮乾燥した物 抗菌、止瀉、口中清涼、胃腸薬

7

官桂(カンケイ) 中国産ケイの樹皮、若枝 血行促進、鎮静、解熱、利尿、健胃

8

太戟(ダイゲキ) 中国・日本産タカトウダイの根 皮膚化膿、浮腫、腹水、瘰癧(るいれき)

9

茵蔯(インチン) 中国・日本産のカワラヨモギのつぼみ 肝臓障害、抗炎症、解熱、利尿

10

続断(ゾクダン) ノアザミ又はノハラアザミの根 骨折、打撲、外傷

11

五加皮(ゴカヒ) 中国産ウコギの根皮 強精、強壮、関節痛、筋肉痛

12

琥珀(コハク) マツ科植物の樹脂の化石 定驚、安神、利水、痙攣、不眠症、神経症

13

菊花(キッカ) 中国産菊の頭上花 頭痛、めまい、目の充血、視力低下
                              以上の13品目は偽せが多くあるので、偽物の場合は一切商売しないこと

番号

薬種名

基原

薬効

1

和藿香(ワカッコウ) 中国パチョリの全草 鎮痛、解熱、整腸、暑気当り

2

和黄耆(ワオウギ) 中国産キバナオウギの根 利尿、降圧、強壮、止汗

3

和辰砂(ワシンシャ) 中国辰州産の辰砂の鉱石(硫化水銀) 痙攣、眩暈、不眠、動悸

4

和滑石(ワカッセキ) 中国産の南滑石(含水珪アルミ粘土鉱石) 膀胱炎、湿疹に外用

5

和代赭石(ワダイシャセキ)      中国山東省産 酸化鉄含有鉱石        造血作用、吐血、鼻血、嘔吐

6

和白斂(ワビャクレン) 中国産カガミクサの根 清熱、解毒、消腫、皮膚化膿

7

和白鮮皮(ワハクセンビ) 中国産ハクセンの根皮 湿疹、疥癬、解毒、止痒

8

和蘆眼石(ワロガンセキ) 中国産 菱亜鉛鉱(主成分は炭酸亜鉛) 結膜炎、角膜混濁、眼瞼糜爛、生肌

9

和桑寄生(ワソウキセイ) ヤドリギ科ヤドリギの茎葉 腰関節炎、筋骨強化、出血

10

和阿膠(ワアキョウ) ウシ・ウマの除毛皮を煮て製したニカワ 補血、いらつき、不眠

11

和常山(ワジョウザン) 中国産ジョウザンアジサイの根 抗マラリア、アメーバー赤痢

12

和白芷(ワビャクシ) ヨロイグサ(ハナウド)の根(独活) 発汗、鎮痛、排膿
以上の12品は唐物は薬効はあるが、和物は薬効が同じであるか確かな薬効は知られていないため、和物は一切商売しないこと

番号 薬種名 基原 薬効

1

熟地黄(ジュクジオウ) ジオウやカイケイジオウの根を酒に7日間漬け、7度蒸し乾燥 補血、眩暈、ふらつき、無力、
脱力感

2

麹半夏(キクハンゲ) サトイモ科ジャラスビシャクの球茎を塩水に漬け上皮を除き
水洗い、乾燥
鎮吐、鎮咳、悪心、消化不良

3

神麹(シンキク) 米を蒸し酵母で発酵させた麹 消化不良、止瀉

4

乾姜(カンキョウ) ショウガの根茎を蒸した後乾燥させたもの 悪心、嘔吐、健胃、去痰、冷え性
                              以上4品は本方の如く修治して商売すること

番号 薬種名

基原

薬効

1

新附子(シンブシ) トリカブトの子根。
以前は川烏頭(カワウズ:トリカブトの母根)と名付け商売していた
温熱、強心、鎮痛作用、抗衰弱

2

雷丸(ライガン) サスノコシカケ科ライガンの菌核
以前は太風子(ダイフウシ)の木の種を雷丸と名付け商売していた
癩病、条虫駆除

3

胡黄連(コオウレン) ゴマノハ科植物の根茎
以前はトウヤク(センブリ)の全草を商売していた
整腸作用、抗炎症作用
胆汁・膵液分泌亢進
                              以上の3品は名を申し替えて商売してきたが以後は本名で商売すること

番号 薬種名 基原 薬効

1

おも目はらや
(オモメハラヤ)
粗製塩化第一水銀の結晶:伊勢おしろい(軽粉:はらや) 梅毒治療剤、下痢(内服)
梅毒性皮疹(外用)

2

平戸人参(ヒラドニンジン)

不明

3

熊野小人参(クマノショウニンジン)

不明

                              以上の3品は薬性が悪いので商売しないこと
 


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    「薬種御改差上申一札の扣帳記載」の薬種三十五品目の本質、基原の概略                        

       常設展示をご覧になる際のご参考までに薬種三十五品目の本質・基原の概略を記載致しました。
       番号 薬種名 基原 薬能

 1

1

牛黄(ゴオウ) ウシ又はスイギュウの胆嚢・胆管結石 鎮痛、鎮痙、利胆、解熱、ひきつけ

 2

2

熊ノ胃(クマノイ) ツキノワグマやヒグマの胆汁の入った胆嚢乾燥品         同上

 3

3

虎膽(コタン) トラの胆嚢の乾燥品         同上

 4

4

白丁香(ハクチョウコウ)

スズメのたタチフンに酒を加え乾燥した物

腹水、浮腫、黄疸、筋痙攣、目の混濁

 5

5

麝香(ジャコウ)

シャコウジカの腺分泌物

強心、呼吸促進、降圧、抗炎症

 6

6

阿仙薬(アセンヤク)

アセンヤクの心材を煎じ濃縮乾燥した物

抗菌、止瀉、口中清涼、胃腸薬

 7

7

官桂(カンケイ)

中国産ケイの樹皮、若枝

血行促進、鎮静、解熱、利尿、健胃

 8

8

太戟(ダイゲキ)

中国・日本産タカトウダイの根

皮膚化膿、浮腫、腹水、瘰癧(るいれき)

 9

9

茵蔯(インチン) 中国・日本産のカワラヨモギの蕾(つぼみ) 肝臓障害、抗炎症、解熱、利尿

 10

10

続断(ゾクダン) ノアザミ又はノハラアザミの根 骨折、打撲、外傷

 11

11

五加皮(ゴカヒ) 中国産ウコギの根皮 強精、強壮、関節痛、筋肉痛

 12

12

琥珀(コハク) マツ科植物の樹皮の化石 安神、利水、痙攣、不眠症、神経症

 13

13

菊花(キッカ)                     中国産菊の頭上花                                               頭痛、めまい、目の充血、視力低下             
以上の13品目は、似せが多くあるので、似せの分は一圓に商売しない事
       

 14  

  1  

和?香(ワカッコウ)      中国産パチョリの全草                                  鎮痛、解熱、整腸、暑気当り     

 15

2

和黄耆(ワオウギ) 中国産キバナオウギの根                                      利尿、降圧、強壮、止汗                

 16

3

和辰砂(ワシンシャ) 中国辰州産の辰砂の鉱石(硫化水銀) 痙攣、眩暈、不眠、動悸

 17

4

和滑石(ワカッセキ)

中国産の滑石(含水珪酸アルミ粘土鉱石)

膀胱炎、湿疹に外用                           

 18

5

和代赭石(ワダイシャセキ) 中国山東省産 酸化鉄含有鉱石 造血作用、吐血、鼻血、嘔吐

 19

6

和白斂(ワビャクレン) 中国産カガミグサの根 清熱、解毒、消腫、皮膚化膿

 20

7

和白鮮皮(ワハクセンビ) 中国産ハクセンの根皮 湿疹、疥癬、解毒、止痒

 21

8

和蘆眼石(ワロガンセキ) 中国産菱亜鉛鉱(主成分は炭酸亜鉛) 結膜炎、角膜混濁、眼瞼穈襴、生肌

 22

9

和桑寄生(ワソウキセイ) ヤギドリ科ヤギドリの茎葉 腰関節痛、筋骨強化、出血

 23

10

和阿膠(ワアキョウ) ウマ・ウシの除毛皮を煮て製したニカワ 補血、いらつき、不眠

 24

11

和常山(ワジョウザン) 中国産ジョウザンアジサイの根 抗マラリア、アメーバー赤痢

 25

12

和白芷(ワビャクシ)             ヨロイグザ(ハナウド)の根(独活)                            発汗、鎮痛、排膿                                     
以上の12品は、唐薬は薬能があるが、和物は薬能が同じであるか確かな薬能は知られていないため、和物は一圓に商売しない事
       

 26

  1  

熟地黄(ジュクチオウ) ジオウやカイケイジオウの根を酒に七日間漬け
七度蒸し乾燥                                 
補血、眩暈、ふらつき、無力、脱力感

 27

麹半夏(キクハンゲ) サトイモ科カラスビシャクの球茎を塩水に漬け
上皮を除き水洗乾燥
鎮吐、鎮咳、悪心、消化不良                

 28

3

神麹(シンキク) 米を蒸し酵母で発酵させた麹 消化不良、止瀉

 29

4

乾姜(カンキョウ)                ショウガの根茎を蒸した後乾燥させた物              悪心、嘔吐、健胃、去痰、冷え性                
以上の4品は本方の如く修治して商売する事
       

 30

  1  

新附子(シンプシ) トリカブトの子根 
以前は川烏頭(カワウズ:トリカブトの母根)と名付け商売していた
温熱、強心、鎮痛作用、抗衰弱  

 31

2

雷丸(ライガン) サルノコシカケ科ライガンの菌核 
以前は太風子(ダイフウシ)の木の種を雷丸と名付け商売していた
癩病、条虫駆除                      

 32

3

胡黄連(コオウレン)            ゴマノハ科植物の根茎 
以前はトウヤク(センブリ)の全草を商売していた
整腸作用、抗炎症作用、
胆汁・膵液分泌亢進
以上の3品は名を申し替えて商売してきたが以後は本名で商売すること
       

 33

 1   おも目はらや 粗製塩化第一水銀の結晶:伊勢白粉(軽粉:はらや) 梅毒治療剤、下剤(内服)、梅毒性皮疹(外用)

 34

 2 平戸人参(ヒラドニンジン)             不明

 35

 3 熊野小人参(クマノニンジン)             不明
以上の3品目は薬性が悪いので商売しない事

道修町の33軒の薬種屋は、「ここに書き上げました薬種には似せが多くありますので、今後は、漢和薬共似せはもちろん、紛らわしい薬種は一切
商売致しません。また、今までは「太風子」を雷丸と申し、「とうやく」を胡黄連と申し「川烏頭」を新附子などと名付けて商売してきましたが、
このような類は薬種屋で申し合わせ、本名で商売致します。今後、偽りを申して商売する者があれば、薬屋中で吟味してお届け申し上げます。
隠し置いて脇よりお聞きになった場合には、如何様にお咎め成されようととも町中異存はありません。」と連判状を御奉行様に差し出しました。

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