製薬企業の戦後60年 

                           第三部「昭和60年代〜平成現代」
                              平成18年4月〜9月まで開催

昭和50年の100%資本自由化以来、国際化の時代となり海外売上高の伸長が製薬企業の発展のために
欠かせないものとなりました。
国際市場への進出には、世界に適用する新薬の研究開発が必要で、国際的な新薬の研究開発競争の
時代に突入しています。
そのため、大企業合併による研究開発力の強化が図られています。

1.国際化と海外売上高の伸長

今までの我が国の医薬品産業は、国内市場優先主義で発展し、医薬品の生産額は約7兆円に達して
いますが、輸出入額からみると、海外医薬品が2.5倍の入超で著しく国際化に立ち遅れています。
しかも、人口に比べて市場規模の大きい日本に着目して、外資製薬メーカーが日本の医薬品市場に進出して
来ています。

欧米の医薬品企業の先進国は、早くから海外に生産と販売の組織をつくり、次のように海外市場依存度を
高めています。

          スイスの大手2社  95%以上
          ドイツの大手企業   75%以上
          米国の大手企業   50%前後

これに対して、日本の製薬企業における海外市場での売上高比率は10%以下でしたが最近は30〜50%と
高い比率を示している企業が現れており、この国際市場への依存度を高めていくことがその企業の発展に
つながるようになりつつあります。
国際進出のための、海外で受け入れられる新薬開発の成否が、製薬メーカーの今後を左右するとみられて
います。

国内の医療用医薬品の売上高
(販売会社レベル)(2004年度) 億円   

日本企業の海外市場依存度
                   (1991年度)%  (2005年度)%

武田薬品工業                5,405 エーザイ          3.8           52.4    
山之内製薬                  3,479

藤沢薬品工業       7.8                         48.6

ファイザー                   3,140

武田薬品工業               9.1                         42.5

中外製薬(ロシュ)              3,107 山之内製薬                  8.5                         38.4
三共                     2,796

三共                            5.3                         35.1

ノベルティス・ファーマ            2,758 第一製薬                     8.4                          20.5
第一製薬                  2,458 三菱ウェルファーマ        4.3                          19.9
エーザイ                  2,408 中外製薬                     4.9                          13.8
万有(メルク)                2,060 田辺製薬                    19.3                           8.3
三菱ウェルファーマ             2,022 塩野義製薬                  0.8                            6.2
          IMSジャパン                    大阪医薬品協会 会報(平成17年8月)


2.国際的な新薬の研究開発競争へ

戦後に見られたような海外新薬の導入は、医薬品の「物質特許」以後、自主開発による新薬の特許の交換条件
クロスライセンス)に委ねければ困難になりました。

昭和60年代から、日本の医薬品産業は本格的に国際的な新薬の研究開発に加わり、平成年代には世界に
日本の新薬が登場し始め、日本の製薬企業が海外に進出しました。
我が国の医薬品産業の「売上高に対する研究費比率」は、全産業の中ではトップ(8.64%)にあり、主要企業は
軒並み10%以上の研究開発費を計上していますが、数千億円規模の巨額な研究開発体制をとる欧米企業とは
まだまだ格段の差があります。
※日本製薬工業協会「DATA BOOK 2005」によると日本の研究開発費はアメリカ企業の約5分の1)

世界大手企業の「医薬品売上高ランキング」をみると、わが国トップの武田薬品工業でも14位で、厚生労働省は
平成14(2002)年8月に「医療品産業ビジョン」を発表して、大型企業合併による研究開発力強化が図られて
います。

               業界再編後の医療用医薬品売上高ランキング(試算)   単位:百万ドル

順位 企業名 売上高

1

ファイザー

39,631

2

グラクソ・スミスクライン

32,335 

3

サノフィ・アペンティス

31,190

4

メルク

22,486

5

ジョン エンド ジョンソン

19,517

6

ノバルティス

スイス

18,926

7

アストラゼネカ

18,318

8

ロシュ

スイス

15,932

9

ブリストル・マイヤーズ スクイブ

14,869

10

ワイス

12,623

11

イライリリー

11,855

12

アボット

10,310

13

アムジュン

8,356

14

武田薬品工業

8,193

15

アステラス製薬(山之内+藤沢)

7,317

16

第一三共(第一+三共)

7,087

17

ベーリンガーインゲルハイム

6,948

18

シェリングプラウ

6,672

19

バイエル

5,958

20

シェーリングAG

5,894

21

ノボ・ノルディスク

デンマーク

4,475

22

エーザイ

4,453

23

メルクKGaA

4,148

24

TAP

3,980

25

アクゾ・ノーベル

オランダ

3,456

26

ジェネンテック

3,300

27

テバ製薬工業

イスラエル

3,256

28

セルビエ

2,763

29

フォレスト

2,650

30

中外製薬(ロシュ)

スイス

2,616

                             大阪医薬品協会 会報(平成17年8月)

3.医薬品流通の近代化とMR

平成3(1991)年1月、公正取引委員会は「医薬品流通ガイドライン」を発表し、これまで医療用医薬品の
価格については、製薬会社がプロパーと呼ばれる学術宣伝員を通じて、医療機関への納入・価格交渉に
大きく関与していました。
製薬会社は、医療用医薬品の値引き補償制度を廃止して「新仕切り価格制」へと移行し、医療機関価格は
卸業者側に委ねられることになりました。
これにより、製薬会社のプロパーは、平成4(1992)年以降、価格交渉ができなくなり、本来の業務である医薬品の
情報提供活動に専念することになりました。

平成3年4月、日本製薬工業協会の教育研修委員会は、医薬情報担当者の呼称を、それまでのプロパーから
MR(Medical Representative)とすることに決めました。
MRは、医師や薬剤師に対する医薬品の情報提供と、市販後の医薬品に関する調査収集報告が主な業務
となり、平成9(1997)年、公正な第三者機関である「医薬品情報担当者教育センター」が設立され、MRの
教育研修を行い、MR認定試験が実施されています。(平成16年までの合格者は7万7570人)

薬理活性が強い医薬品や、使用方法が複雑な医薬品が増加し、医薬品の適正使用が大きな課題となって
きています。
医師の患者に対するインフォームド・コンセント(病気や薬剤についての説明が充分に理解され、同意する)が問われる
ようになり、医療現場における医薬品の適正使用の推進のため、製薬企業のMRは、資質の向上と
医療の一端を担う使命感が求められています。

4.医薬分業の進展

明治時代以来、医薬分業は薬剤師の悲願ででしたが、実質的には例外規定のため永年に渡りなかなか
進みませんでした。
昭和49(1974)年に診療報酬改定により、処方箋料が10点から50点に大幅に引き上げられ、院外処方箋の
発行数が次第に増加するようになりました。
医薬分業により医師と薬剤師による二重チェックで、多種類の医薬品の重複投与、過剰使用や相互作用の
薬害を防ぐことが目指されています。

昭和61(1986)年、医療法の第2次改正が行われ、薬剤師が地域医療の中に位置づけられ、「医療元年」に
なって医薬分業は積極的に急推進されはじめ、薬剤師と調剤薬局は地域医療の主役の一員となりました。

医薬分業率(処方箋受け取り率)は、平成2(1990)年には12%でしたが、次のように順調に伸びています。

      平成6年  18.1%   平成10年  30.5%   平成14年   48.8%   
      平成8年  22.5%   平成12年  39.5%   平成16年   53.8%

平成7(1995)年に、医薬品にも製造物責任法(PL法:Product Liability Law)が適用されました。
この法規制によって、医薬品の副作用についての責任は、医薬品製造企業が負うこととなりました。
一方、複数の医薬品の組み合わせの処方で起こる副作用については、その処方箋を出した医師及び、
その処方箋の点検が適切でなくて調剤した薬剤師の責任とされました。
このPL法の医薬品への適用によって、医師は薬剤師と責任を分担するために、医薬分業は確実に推進されることになります。

薬剤師の使命が重視されるに伴い「医療の担い手」として活躍できる質の高い薬剤師の養成のため、薬学教育の充実・強化に向けて、平成18(2006)年から、薬学部の修業年限が6年間に延長されることになりました。

5.ジェネリック薬(後発医薬品)

既に販売されている薬剤の特許が切れた後、ほぼ同じ成分で同じ薬効をもつ医薬品をジェネリック
(後発医薬品)といいます。
ジェネリック薬は、後発であるため研究開発費がかからず、薬価が先発品より3〜5割安価に提供できます。

高齢化社会を迎え、国民医療費の増大が予想されるので、低価格な後発医療品の供給は、薬剤師の低減に
より医療費を抑制し、国民の負担を軽減することになります。

欧米における後発医薬品の使用は50%に達していますが、日本ではまだ約16%で、医師の使い慣れで
先発メーカーのブランド名で処方されることが多く、患者側も開発メーカーの医薬品への信頼度が高いのが
現状です。
また、後発医薬品は、成分が同じでも製剤技術の差によって効き目が左右されることがあり、後発品の
製薬企業は製剤技術を向上させ、先発医薬品の品質と製剤学的、及び生物学的に同等の医薬品を供給する
使命が求められます。

6.大衆薬部門の再編集の動き

医薬品は、医療用医薬品と一般用医薬品(大衆薬)に分けられますが、医療用医薬品メーカーの間では、
国際化や外資企業の攻勢に対抗するため、大衆薬事業から撤退して、大衆薬メーカーに営業譲渡する動きが
活発化しています。

中外製薬(グロンサンなど)           → ライオン(バファリンなど)
三菱ウェルファーマ(サロメチールなど)    →  佐藤製薬(ユンケルなど)
大日本製薬(マルピー下痢止めなど)     → 興和(キャベジンなど)
住友製薬(ダンなど)→住友製薬ヘルスケア
→大日本除虫菊(キンチョールなど)     →
ダンヘルスケア
第一製薬・三共(パテックス、ルルなど)   →  第一三共ヘルスケア
アステラス製薬(ガスター10など)       → ゼファーマ→第一三共ヘルスケア
                                               (  )内は代表的な薬品

 

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