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製薬企業の戦後60年
第ニ部「昭和40年代、50年代」 平成17年10月〜平成18年3月まで開催
◆この期間における主要事項
| 昭和37(1962)年 |
サリドマイドによる胎児の催奇形性 判明(出荷停止) |
| 40(1965)年 |
アンプル入り風邪薬によるショック死事故 |
| 42(1967)年 |
医療用医薬品の一般向け広告禁止 医薬品副作用モニター制度 発足 医薬品製造業50%外国資本自由化 |
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45(1970)年 |
セファゾリン開発 キノホルム剤によるスモン症 判明(販売中止) |
| 47(1972)年 |
医療用医薬品の再評価はじまる |
| 48(1973)年 |
老人医療費の無料化 |
| 50(1975)年 |
医薬品製造業が100%外国資本自由化 |
| 51(1976)年 |
物質特許制度の実施 GMP(製造・品質管理基準)実施 医療用医薬品のプロモーションに関する倫理コード |
| 53(1978)年 |
一般医薬品の再評価開始 |
| 57(1982)年 |
70歳以上の医療費患者一部負担 GLP(安全性試験基準)の実施 |
1.薬害問題の発生
戦後の新薬はその薬効が強力となり、実験動物を使った急性・慢性・毒性試験が厳密に行われましたが、 臨床試験において明らかにすることができなかった副作用が、まれに起こることを避けるのは困難でした。
西ドイツで発売され、日本でも販売されていた睡眠剤サリドマイドが、昭和36(1961)年に胎児の催奇形性 であることが報告され、翌37年に自主的に出荷を停止、全面的に回収されました。 その後、サリドマイド被害者による訴訟がありましたが、昭和49年10月、訴訟の和解が成立しました。
次いで昭和45(1970)年、戦前から評価の定まった止痢薬キノホルムによるスモン症の発生が明らかに なり、販売中止と使用の見合わせが通達されました。 昭和46年から各地の地裁に提訴されたスモン薬害訴訟は、難航を重ねた末、昭和54年9月和解に関する 「確認書」が調印され、次々と和解が成立しました。
こうした薬害問題を契機として、医薬品の安全性確保と適正使用が問われるようになり、製薬企業において 安全性を調べる動物実験施設の建設が促進されるようにまりました。 相次ぐ医薬品の副作用問題に対処して、厚生省は昭和42(1967)年「医薬品副作用モニター制度」を発足 させ、副作用情報網を構成し、新開発医薬品の副作用報告を義務付けています。 また、昭和47(1972)年から「医療品医薬品の再評価」がはじまり、昭和53(1978)年には、「一般用医療品」 にまで再評価が実施され、旧制度で製造・発売が許可されていた医薬品が再検討を受けました。
2.物質特許制度の採用
従来我が国は長く「製造特許制度」が実施され、外国で創製された既知の医薬品について、新規な製法を 考案すると特許が認められ、生産・販売することができました。 しかし、新規の物質がどのような病気に対して有効かを調べ、その上に安全性を確保して創製された新薬の 特許を保護するため、昭和51(1976)年、特許法改正により「物質特許」が認められ、新薬開発者の権利が 保護されました。 物質特許制度になって以来、今までのイミテーション製造からの脱皮が必要となり、基礎的段階からの新薬の 研究開発が促進され、世界に通用する日本独自の新薬の自主開発路線が指向されるに至りました。
その先駆けとなったのは、昭和46(1971)年の藤沢薬品工業によるセファゾリン(商品名:セファメジン)の開発 でした。 セファロスポリンCが発見されると、その医薬品への開発・実用化が英国から世界に呼びかけられ、 日本では、藤沢薬品工業が挑戦し、国産初のセフェム系注射用抗生物質として、セファゾリン開発に成功しました。 この開発成功に刺激されて、我が国大手製薬企業は新しいセファム系抗生物質の合成に次々と成功を収め、 昭和45(1970)年から、抗生物質が医薬品生産高の第1位となりました。
※セファム系抗生物質 : ペニシリン系に近い抗生物質。有効菌種が広い。
第T〜第V世代 セフェム系抗生物質の変遷
| 第T世代 |
昭和41(1966)年 |
セファロチン … ケフリン |
リリー -塩野義 |
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42(1967)年 |
セファロリジン … ケフロジン |
リリー -塩野義 |
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45(1970)年 |
セファレキシン … ケフレックス |
リリー -塩野義 |
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46(1971)年 |
セファゾリン … セファメジン |
藤沢 開発 |
| 第U世代 |
昭和55(1980)年 |
セフメタゾール … セフメタジン |
三共 開発 |
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56(1981)年 |
セフォチアム … パンスポリン |
武田 開発 |
| 第V世代 |
昭和57(1982)年 |
セフチゾキシム … エポセリン |
藤沢 開発 |
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同上 |
ラタモキセフ … シオマリン |
塩野義 開発 |
3.セフェム系以外の自主開発新薬
セフェム系抗生物質の合成に成功した我が国の製薬企業では、新薬の自主研究・開発力が次第に発揮され出し、 昭和40年代から50年代に次のような医薬品が登場しています。
| 広域用ペニシリン剤 |
アンピシリン アモキシシリン タランピシリン |
ソルシリン(武田) サワシリン(藤沢) ヤマシリン(山之内) |
| キノロン系抗菌剤 |
オフロキサシン ピロミド酸 |
タリビット(第一) パナシッド(大日本) |
| 胃・十二指腸潰瘍治療薬 |
シメチジン オメプラゾール テプレノン |
タガメット(藤沢) タケプロン(武田) セルベックス(エーザイ) |
| 肝疾患薬 |
グルタチオン |
タチオン(山之内) |
カルシウム拮抗剤 (高血圧症・狭心症治療薬) |
ジルチアゼム ニカルジピン |
ヘルベッサー(田辺) ペルジピン(山之内) |
| 強心剤 |
ユビデカレノン |
ノイキノン(エーザイ) |
| 精神安定剤 |
オキサゾラム メキサゾラム |
セレナール(三共) メレックス(三共) |
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| 抗てんかん剤 |
クロナゼパム |
ランドセン(住友) |
| 抗めまい剤 |
ジフェニドール |
セファドール(日本新薬) |
| 脳代謝賦活剤 |
ホパンテン酸Ca |
ホパテ(田辺) |
| 脳血液循環改善剤 |
カプトプリル |
カプトリル(田辺) |
| 抗プラスミン剤(止血剤) |
トラネキサム |
トランサミン(第一) |
| 蛋白分解酵素剤 |
セラチオペプチターゼ |
ダーゼン(武田) |
| 子宮収縮剤 |
プロスタグランジン |
プロスタルモン(小野) |
| 代謝拮抗剤(抗ガン剤) |
テガフール |
フトラフール(大鵬) |
4.GMPとGPL
我が国の製薬企業で行っていた品質検査の方法は、科学的な品質管理の理論に基づくものではありませんでした。
戦後アメリカで発達した統計的品質管理法を、昭和25(1950)年、デミング博士が来日して指導にあたり、品質管理 の手法が普及して高品質の製品が製造されるようになりました。 しかし、医薬品による薬害問題以来、一段と厳しい品質管理が求められ、厚生省は医薬品の製造に関する法規制 として、GMP(Good
Manufacturing
Practice:医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準)を定め、 昭和51(1976)年から実施されました。 GMPに対応して、製薬工場施設や設備の改善と品質の確保が一層推進されるに至りました。
また、新薬を研究・開発するための動物実験施設において、薬効と毒性、発がん性、催奇形性などの動物実験を 統一された基準で行うため、厚生省は、GLP(Good
Laboratory
Practice:医薬品の安全性試験の実施に関する基準) を制定し、昭和57(1982)年から実施しました。 これらの法規制によって、医薬品の研究・開発は安全性と信頼度が高められることになりました。
5.医薬品製造業100%資本自由化
戦後、外国の画期的新薬は海外メーカーとの提携契約により、我が国の製薬企業へ続々と導入・発売されました。 日本の医薬品市場における流通の複雑さなど事情が不分明のため、外国メーカーは日本の製薬企業に販売を委託 していました。
先進諸国から製造技術を導入して、我が国の製薬企業が薬を自製・国産化する段階になると、外国メーカーは日本 国内で自前で販売する要望が高まってきて、昭和45(1970)年には「医薬品販売業50%外国資本自由化」となり、 海外メーカーとの提携契約は次々と解消に向かいました。
さらに、昭和50(1975)年から、医薬品製造業100%外国資本自由化により、外資系メーカーの日本医療品市場への 参入が相次ぎ、激烈な市場争奪が展開されるに至っています。
【外資との販売提携解消の例】
| 武田薬品工業 |
→ |
バイエル(独) |
| 三共 |
→ |
サンド(スイス) |
| 藤沢薬品工業 |
→ |
スミスクラインビーチャム(英)、アストラ(スイス) |
| 田辺製薬 |
→ |
ベーリンガーインゲルハイム(独) |
| 住友製薬 |
→ |
アップジョン(米)、ゼネカ(英) |
| 山之内製薬 |
→ |
ノベルティス(スイス) |
| 塩野義製薬 |
→ |
イーラン・リリー(米) |
| 大日本製薬 |
→ |
モンサント(米) |
(注) チバガイギー+サンド=ノバルティス ファルマシア+アップジョン=ファルマシア・アップジョン グラクソウェルカム+スミスクラインビーチャム=グラクソ・スミスクライン アストラ+ゼネカ=アストラゼネカ
山之内製薬+藤沢薬品工業=アステラス製薬 大日本製薬+住友製薬=大日本住友製薬 三共+第一製薬=第一三共 田辺製薬+三菱ウェルファーマ=田辺三菱製薬

参考資料 : 薬事日報社 日本薬史学会編 「日本衣料品産業史」 平成7年刊
薬事日報社 西川 隆 著 「くすりからみた日本」 平成16年刊
製薬会社 各社 「社史」
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